ずっと父がお世話になった主治医の先生のところに、母と一緒にあいさつに伺った。

父はこの先生のことが大好きで
「先生に命を預けてるから」
と、全幅の信頼を寄せていた。

できることはできる、できないことはできないと、
ズバッとはっきり物事を伝えるのが、父の性格に合ってたんだと思う。
また、むやみやたらと抗がん剤治療を勧めないところも、私も好ましいと思ってた。

家族がガンと診断されたら、おそらく多くの人はまずネットで情報を検索したり、本屋で参考になりそうな本を探したりすると思う。
そして玉石混合で溢れかえる情報に、かえって混乱してしまう人も多いのではないかと思う。
私もそうだったように。

そういった点から、患者自らが主治医のことを心から信頼して積極的に治療に臨めるのは、ある意味とても幸せなことなのではないかと思う。

主治医の先生はとても忙しい診察の合間をぬって、話をする時間をつくってくださった。
これまで気丈に振舞っていた母も、先生の前では涙ぐむ姿を見て、
ずっと父と二人三脚で病と向き合ってきたんだということを改めて強く感じた。
そしてようやく涙を見せることができた母を見て、ちょっとホッとした。

「お父さんから学ばせてもらったことがたくさんあります」と、主治医の先生。
先生がこれまで治療してきた患者の中でもベスト3に入るほどの我慢強さだったそう。
そして、どんな時も前向きだったと。
そうなんだ。

この4年間ガンという病を通して、父のことを1人の人間として深く知るきっかけを与えてもらったように、この頃よく思うのです。